2012年4月9日月曜日

こんにちは 秋田県産婦人科医会です:診療のトピック



おぎゃー献金について

 

 

 皆さんはおぎゃー献金という制度をご存知でしょうか?

 

 最近お産をされたことがある方、あるいは家族がお産をされた方であれば、病院あるいは産婦人科医院でこの言葉を聞いたことがあるかもしれません。あるいは実際献金をして頂いたかもしれません。

 

 そのしくみですが、お産をした方がお産をした診療施設にある献金箱へ献金して頂くと、その献金が日母おぎゃー献金基金という団体に集められ、全国の心身障害児のための施設や心身障害児の研究を補助するために使われることになるのです。

 

 この制度は、鹿児島県大口市で産婦人科を開業していた遠矢善栄博士が近くに住む重症心身障害児の三姉妹を見て、なんとか救済してあげたいと考えたのがきっかけとなりました。健康な赤ちゃんをお産されたお母さん方とそれに立ち会った医師や看護婦さんたちが障害児に対して献金できるような制度を考案され、この運動の発端となりました。日本母性保護医協会鹿児島県支部ではこれを「おぎゃー献金」と名付け、昭和39年1月からこの運動を始め、さらに同年7月1日「おぎゃー献金全国運動発足の集い」が開催され、全国的な運動となりました。1年間で1億円以上の寄付を集めるほどになり、毎年全国の心身障害児のための施設や心身障害児の研究している施設(大学病院など)に配分されています。

 

 この制度が始まってからまもなく50周年を迎えますが、全国の献金総額は平成4年度の1億8500万円をピークとして徐々に減少し、平成18年度には1億400万円にまで減少しました。その後一旦持ち直しましたが、平成21年度は9704万円と1億円を割っている状態です。診療施設への直接献金が減少しているのが大きな原因と思われます。ちなみに秋田県では、産婦人科会員1人当りの献金額は全国的にとても多く、平成21年度は全国6位、平成22年度は全国2位と高い位置を保っております。

 

  最近は企業からの協力も得られるようになりました。たとえば、(株)伊藤園のおぎゃー献金自動販売機を診療施設に設置してもらうと、その売り上げの一部がおぎゃー献金に入るしくみになっています。現在全国で約430台の自販機が診療施設に設置され、献金実績が上がっています

 

 最近献金の増額を期待できる動きがありました。平成22年11月よりおぎゃー献金基金は公益財団法人となり、おぎゃー献金への寄付が税の優遇措置を受けられるようになったことです。具体的には2000円以上の献金をしていただければその献金が控除扱いとなります。

 

 もしこの記事を読んでおぎゃー献金に興味を持った方がいらっしゃれば、このホームページにリンクしている日母おぎゃー献金のサイトをぜひご覧になって下さい。

 

 お産に関係のない方からの献金も可能です。ホームページに献金についての詳しい方法が説明されていますので、ぜひ協力のほどお願いいたします。 (松井俊彦 記)

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遺伝相談と遺伝カウンセリング
 

はじめに

今回は遺伝相談に関して、ご説明いたします。「遺伝相談」というと大変なことという印象を持たれることと思います。また、自分には無関係だと思われる方も多いのではないでしょうか。「遺伝(いでん」」という字句は大変に重い印象であるからなのかもしれません。しかし皆さんは、生まれたばかりの赤ちゃんを見てよくこのようにお母さんに話す時がありませんか。「この子の目は、お母さんにそっくりですね。鼻の形は、お父さんに似ていますね」。これはまさに「遺伝」を表しているのです。その他にも、「お母さんの血液型はO型で、お父さんの血液型がO型だから、生まれてくる子供は、絶対にO型ですよね」。もちろん、これも「遺伝」を表しています。遺伝とは、「生殖により親から子へ形質がうつる現象のこと」とされています。非常に難しい言葉ですね。簡単にすると、「親から子へ性質が伝わって行くこと」だと言えます。さっきの鼻や口の形であったり、皮膚の色であったり、というのは親からの性質だといえますね。もちろん、「運動神経が良いのはお母さんに似たのね」や「お爺ちゃんに似てこの子は体格が大きい」、「身長が大きいのは、お父さん譲りだね」というのも、遺伝によっておこることなんですね。

 

遺伝の性質?

ここで、その性質が問題となるわけですが、「病気にかかりやすい性質」だとか、「病気になる性質」というのもあります。例えば、糖尿病になりやすい体質、高血圧を起こしやすい体質、というのは遺伝すると言えます。よく耳にする糖尿病・高血圧・高コレステロール血症などの一般的な病気は、このような体質だけで病気が引き起こされるわけではありません。現在では、体質などの遺伝要因に加えて、生活環境など複合的な要因が作用して病気が引き起こされると考えられています。しかし、皆さんにはあまり聞き覚えのない病気もたくさんあり、そのような病気の中には、遺伝が原因で起こるものがあるのです。このような遺伝が原因となり引き起こされるような病気に関して相談することを遺伝カウンセリ� ��グと言っています。遺伝相談というのは、皆さんに判りやすくするために遺伝カウンセリングを言い換えた言葉です。遺伝カウンセリングを通じて、病気のことを十分に理解し、病気を確実に診断したり、発症しないような対策を立てたり、遺伝しないような予防策を講じたりすることによって、病気に打ち勝つことを目的としている訳です。

 

遺伝の昔話

ここで、昔のお話をご紹介したいと思います。その当時、遺伝カウンセリングが行われていれば、歴史も大きく変化したであろうと思われるエピソードです。

①ツタンカーメン王

 皆さんもご存知でしょうかエジプトの古代の王様であるツタンカーメンの話です。彼のお父さんは、アメンホテプ3世という非常に長生きした人です。アメンホテプ3世には絶世の美女だと言われるネフェルティティという愛人がおりました。その愛人との間にできた女の子がアンケセナーメンという人です。この女性は後に、自身の異母兄妹にあたるツタンカーメン王と結婚することになったわけです。非常に仲の良い夫婦でしたが、授かった双子の子供は、幼くして亡くしてしまっています。そしてその後子供を一度も授かることなく、18歳という年齢で、ツタンカーメン王は戦車から落ちて亡くなってしまいました。この背景にある病気が、Klippel-Feil(クリッペル・ファイル)症候群という病気です。現代では、全く問題となる病気ではありませんが、当時では慢性に進行し時に死に至る病でありました。ツタンカーメン王の実の兄であるアメンホテプ4世もこの病気の持ち主でありました。二人ともこの病気がもととなり亡くなってしまったわけです。

②ロシア帝国最後のアレクセイ皇太子

 もうひとつのエピソードは、現在のイギリスのエリザベス女王にまつわる話です。ヨーロッパの王室は、イギリスもフランスもドイツもロシアもすべて親戚の関係にありました。互いに友好関係を築くために行ってきたことです。エリザベス女王の祖父の祖母(高祖母:ひいひいおばあちゃん)はビクトリア女王ですが、この方は血友病の保因者であったわけです。現代では、血友病は完全に治る病気であり恐れる必要の無いものです。このビクトリア女王の子供達はヨーロッパ各国の王室を作ったり、またお嫁さんとして他国の王室に行ったりしました。これが原因となり、ヨーロッパの王室の多くで血友病が発症してしまいました。最近では、最後のロシア皇帝ニコライ2世のお子さんであるアレクセイ皇太子は、ロシア皇帝を継ぐ初めての男児と期待されましたが、若くして血友病を発症することになるのです。このため子供の病気を心配した母親のニコライ2世皇后は、ラスプーチンという僧侶を雇い入れ、病気を治させようとしました。ご存知のようにこれがもととなりロシア帝国は崩壊しソビエトになったわけです。このように、遺伝する病気があり、これがもととなり、国家までなくなることがあるわけです。

 そのような事が無い様にするために、遺伝カウンセリングという医療行為がなされるようになりました。

 

遺伝カウンセリングは何をするの?

 では、遺伝カウンセリングでは何をするのでしょうか。大きく分けて4つのことがあります。①出生前診断(しゅっせいぜん・しんだん)、②発症前診断(はっしょうぜん・しんだん)、③保因者診断(ほいんしゃ・しんだん)、④易罹患性診断(いりかんせい・しんだん)、です。難しい言葉ばかりですね。それぞれ順を追って説明いたします。

①出生前診断:これは赤ちゃんが生まれる前に、赤ちゃんに病気が無いかどうかを検査し診断するものです。新聞でもよく見る着床前診断(ちゃくしょうぜん・しんだん)などもこの中に入ります。羊水染色体検査などもこれに含まれます。

②発症前診断:これは、病気を発症する前に、発症するかどうかを検査・診断するものです。たとえば、「母親が乳がんで心配なので、私もなるかどうか調べて欲しい」というような場合ですね。

③保因者診断:お子さんやお孫さんに病気が遺伝するかどうかの原因を持っているかを検査診断するものです。例えば「私には結婚しようと思っている人がいる。私には血友病の兄弟がいるので、血友病の子供を生むかもしれないという心配があるので、結婚する前に調べてほしい」などという場合に相当します。

④易罹患性診断:家族内で多くの病気が発症しているような場合に、そのような病気になる可能性があるかどうかを検査診断するものです。例えば「祖父も父親も兄も大腸がんでした。母親は胃がんでした。母親の妹は白血病に今かかっています。私はいま現在健康ですが、がんになる可能性があるでしょうか」などというような場合に相当します。

 以上のように、ある病気の発症が心配である場合に、遺伝カウンセリングが必要とされるわけです。4つの中のどれにあたるか自分では判らないような場合でも、問題はありません。カウンセリングしていく中で、問題点が明らかになりますので、カウンセリングする側が判断していくことになります。ただし注意して頂きたいのは、対象とする病気があることです。正確な診断名はわからなくともいいのですが、対象とする病気がなければ、遺伝カウンセリングは困難となります。ただ漠然と「病気になりたくない」、「奇形のある子は産みたくない」というのでは、カウンセリングできません。

 

遺伝カウンセリングはどこで受けられるの?

 遺伝カウンセリングを専門に行っているところは、秋田県内では、秋田大学病院だけとなります。秋田大学では遺伝子医療部という部署で、専門に遺伝カウンセリングを行っています。電話または大学病院受付窓口での予約を取ってから受診する形を取っています。完全予約制で、健康保険が使えない自費診療となります。料金は、初回4200円で2回目以降2100円となります。遺伝子医療部では、遺伝カウンセリングに関して特別に訓練された臨床遺伝専門医(※)が対応します。必要に応じて血液検査や遺伝子解析検査が行われます。その場合の費用は別途必要となります。受診される場合には、あらかじめ電話などで予約を取ってもらうことになります。電話番号など受診の詳細は、遺伝子医療部のホームページをご覧下さい。→

 

※ 臨床遺伝専門医→

 遺伝医学についての充分な知識と経験・業績を有し、遺伝カウンセリングの特別な訓練を受けた医師を、人類遺伝学会が臨床遺伝専門医制度に基づき認定する専門医のこと。

 

産婦人科での遺伝カウンセリングって何?

 ご存知のように妊娠されますと、妊婦健康診査を受けることになります。妊婦健康診査では、血液検査や超音波検査などで、赤ちゃんやお母さんに異常が無いかどうかをチェックしています。この際に、赤ちゃんに異常が見つかることがあります。その異常の種類によっては、赤ちゃんの生まれつきの病気(先天異常:せんてん・いじょう)の場合があります。もちろん、生まれることである程度の診断がつきますが、生まれる前に診断して欲しいというような要望があります。このような際に受診するのが遺伝カウンセリングとなるわけです。

 また、最近では高齢妊娠(35歳以上での妊娠)の方が増えて来ています。高齢妊娠では、染色体の不分離により、結果として赤ちゃんの染色体異常の頻度が増えます。この状態を生まれる前に検査または診断する方法があります。この検査を受ける前に、遺伝カウンセリングが必要となるわけです。したがって、産婦人科外来では、この遺伝カウンセリングの素養を見に付けた医師が対応することになります。

 さらに、妊娠初期の超音波検査では、この赤ちゃんの染色体異常を見つけることも可能となります。もしみつかった場合には、詳しい検査(羊水染色体検査など)をすることで診断が出来ます。このような場合にも、遺伝カウンセリングは必要となります。

 その他に、「上の子が○○という病気があったので、生まれてくるこの子にも同じ病気がないか心配で‥」というような場合にも遺伝カウンセリングが必要となって来ます。

 

着床前診断って何?

 着床前診断(ちゃくしょう・ぜんしんだん)は、受精卵の段階で、異常が無いかを調べて、異常が無い受精卵を子宮内に戻して妊娠させることで、病気の発症を防ごうというものです。非常に倫理的な問題が含まれているので、誰にでも行えるものではありません。しかし、着床前診断をしないと、何度も流産や死産を繰り返したり(習慣流産)、場合によっては、母体への負担を増大させ母体死亡につながったりする事もありますので、一部の病気では、着床前診断が認められています。秋田県内では、これを行っている施設はありませんので、行える施設に紹介する事になります。その場合にも、より一層慎重な遺伝カウンセリングが必要となります。

 

最後に

 遺伝カウンセリングは、多領域にわたる医療行為で、充分な知識を持って望まれるべきだと考えられています。遺伝カウンセリングが無かったために国家が無くなるほどのパワーを持っています。したがって、たった一言で人生が大きく変わることもあります。インターネットからの多くの情報により混乱することが多い現代ですからこそ、適切な遺伝カウンセリングを受けることで、混乱せず前向きに生きてみたいものだと思います。(小川正樹 記)

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腹腔鏡下手術

 

腹腔鏡下手術とは、お腹に小さな穴を3~4か所開け、カメラで見ながら細い鉗子(マジックハンドのようなもの)を用いて行う手術のことです。ここではQ&A方式で腹腔鏡手術の概略をお示しします。

 

 

Q1 どのように手術するのですか?

 

A1  通常は全身麻酔をかけ、手術を行います。

1.    おへそのすぐ下あるいは上を5mm1cmほど切って特殊なカメラを入れます。

2.    腹腔内を観察するためにガス(二酸化炭素)でお腹を膨らませます。

3.    下腹部あるいは側腹部に5mm1cmの穴を23か所開け、ポートと呼ばれる筒を入れます。その筒からマジックハンドのような 鉗子を出し入れし、お腹の所見をテレビで映しながら手術操作を行います。

*最近ではおへそのところに1か所だけ穴をあけ手術を行う単孔式と呼ばれる方法で行う施設もあります。

 

 

Q2 腹腔鏡下手術のメリット・デメリットは何ですか?

 

A2  最大のメリットは手術の傷が小さくなることです。通常開腹の手術だと1015cmの傷になります。その傷をできるだけ小さくすることにより、術後の痛みの軽減、入院日数の短縮がえられます。また、女性としては特に気になる美容に関しても傷が目立たなくなり、非常に有益です。傷が小さくなると手術後の癒着の頻度も少なくなります。また、手術操作としては、カメラで近くから観察できることから、開腹手術よりもより詳細に観察できるというメリットもあります。デメリットとしては、視野が一方向からしか得られない、触角による診察が難しい、操作にどうしても制限がでるなどの腹腔鏡の特有な問題があり、手術の適応がある程度制限されることがあげられます。また、一般的に特殊器具を使用することから開腹手術より手術料が高価になります。

 

 

Q3 外来から入院のだいたいの手順を教えてください?

 

A3 通常は外来で診察し、まづはどのような手術を行うか相談します。手術が決まったら全身麻酔をかけるための術前検査を行います。通常手術の12日前に入院し、準備をします。多くの病院は手術後2~4日で退院する予定になっています。抜糸を行う病院では手術後67日目に外来で抜糸を行います。平均的には退院後2週間ぐらいで復帰可能になります。多くの病院ではクリニカルパスと呼ばれる予定表がありますので、相談してみてください。

*あくまで一般的な手順です。病院によって異なることもあります。

 

 

Q4 どのうような病気が腹腔鏡下手術の適応になりますか?

 

A4 腹腔鏡で行われる頻度の高い疾患および手術の種類を下表に示します。

 

疾患名

手術の種類

手術の方法

子宮筋腫

腹腔鏡下筋腫核出術 (TLM)

腹腔鏡下で筋腫を核出する方法

腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術 (LAM)

腹腔鏡でみながら、小さな穴(23cm)から筋腫を核出する方法

腹腔鏡補助下膣式子宮全摘術 (LAVH)

腹腔鏡で子宮上部の靭帯や癒着を処理し、膣から子宮を全部摘出する方法

腹腔鏡下子宮全摘術 (TLH)

腹腔鏡下で子宮を全部摘出する方法

卵巣嚢腫(良性)

腹腔鏡下嚢腫核出術 (体内法)

腹腔鏡下で卵巣腫瘍を核出する方法

腹腔鏡補助下嚢腫核出術 (体外法)


酸化防止剤は何ですか

腹腔鏡でみながら、小さな穴(23cm)から卵巣腫瘍を核出する方法

腹腔鏡下付属器切除術

腹腔鏡下で卵巣と卵管を摘出する方法

子宮外妊娠

腹腔鏡下卵管切除術

妊娠している卵管を腹腔鏡下で切除する方法

腹腔鏡下卵管線状切開術

妊娠している卵管に切開を入れ、妊娠部分のみ取り除く方法(卵管が残る)

腹腔鏡下MTX局所注入

妊娠している部分にMTX(薬剤)を注入し、絨毛を壊死させる方法(卵管が残る)

子宮内膜症

腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術 

腹腔鏡下にチョコレート嚢腫や子宮内膜症の部分をできるだけ除去する手術

卵管閉塞

腹腔鏡下卵管形成術

腹腔鏡下に卵管を形成する方法

不妊症

診断・癒着剥離術

腹腔鏡で観察し、癒着があれば剥離し、妊娠しやすくする方法

多嚢胞性卵巣

腹腔鏡下卵巣表面焼灼術

卵巣表面をレーザーなどで多くの孔をあける方法(排卵しやすくなる)

 

手術の種類は沢山ありますが、腫瘍の大きさ、癒着の有無、挙児希望の有無、年齢など、さまざまな要素を勘案して手術方法が検討されます。詳細は主治医に相談してみましょう。

*最近では悪性腫瘍も腹腔鏡下手術で行う病院もありますが、まだ一般的ではありません。

 

 

Q5 どんな合併症があるのですか?

 

A5 一般的に開腹の手術では以下の合併症が知られており、腹腔鏡でも同様です。出血のコントロールができない、癒着による周囲臓器損傷の危険性が高いなどの時は、術中に開腹手術に移行することがあります。また、腹腔鏡に特徴的な副作用として、術後、肩の痛みを感じることがあります。お腹にガスをいれるため、横隔膜などが刺激されるためと考えられています。

【一般的な合併症】

・出血

・感染症

・術後癒着

・腸閉塞

・術後深部静脈血栓症

・周囲臓器損傷(腸管、膀胱、尿管など)        (福田 淳  記)

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周産期医療の喜びと苦悩    -とくに産科医師不足と、その対策について-

 19851015日、日本武道館で行われたファイナルコンサートで山口百恵さんは、こう、仰いました。「母という素晴らしい女性がいたから、私達に今、この一時(ひととき)があります」。お母さんがいなければ、だれにも「今」は、あり得ません。

 周産期医学は"feto-maternal medicine"とも言います。日本語訳は"胎児とお母さんの医学"です。そうです、周産期医療は、お母さんという、素晴らしい人間を診る医療と言えます。周産期医療に携わる医師および助産師は、単に医療を提供するのみならず、お母さんになる喜びを分かち合い、母性という、この世の中で最も尊い愛を育む、お手伝いをさせていただく役割も担っているのだと思います。さらに"reproductive medicine"、すなわち生(繁)殖を通して、社会の活性化に関わっている医療でもあります。このように周産期医療には、明日の社会の担い手となる母児の安全に関わる医療としての魅力と、生命の尊厳、さらに母性や家族の絆といった人間性の育成にも深く関わるところに、他科とは違った面白さがあるのだと思います.

 周産期死亡率は周産期医療の水準をあらわす指標と言われています。これは出産数1,000人に対する、妊娠22週以降の死産数と生後1週間未満の新生児死亡(早期新生児死亡)を加えたものの割合です。わが国のそれは約5人と、世界の中で最も低い、すなわち周産期医療のレベルが最も高い国と言えます。さらに、不幸にして妊娠や分娩で亡くなる女性の割合は10万人の出産数に対し約4人と、これも世界の中で最も低い国の一つです。以上から、現在の日本では、出産のため母や子が命を失うなど、到底、考えられないという風潮があるわけです。しかし、そのイメージこそが妊娠や出産に対する、安易な認識を作り出すことにつながっています。 

 これまで耳に馴染みの少なかった「周産期医療」という言葉が、この数年間の大きな出来事で、にわかに身近なものになりました。その筆頭にあげられるのは、前置癒着胎盤の帝王切開術時、出血多量で死亡した妊産婦の執刀医が逮捕された福島県の大野事件と、頭蓋内出血をおこした妊婦を受け入れてくれる病院がなかなか見つからず、搬送先の病院で死亡してしまった奈良県の大淀病院事件でしょう。これらの痛ましい事件を契機に、周産期医療の過酷な現状が浮き彫りにされ、産婦人科医の産科離れ、医学生の産婦人科回避が相俟って分娩施設が激減した結果、「お産難民」、すなわち自宅や実家の近くで分娩することができなくなった妊産婦がにわかに増えていったのです。

 この秋田県でも、全く同じ現象が見られました。2001年には40施設(病院21施設、診療所19施設)あった分娩施設数が、2010年では27施設(病院16施設、診療所11施設)と、この10年間で30%以上減少しました。とくにお産をとり扱う診療所(開業医)は半減しました。一方、秋田県の産婦人科医師数は、2001年の136人から2010年の127人と、若干の減少はあるものの、他県で見られるような顕著な減少はありません。秋田県において、お産を扱う診療所が減った理由は、お年を召されて分娩を取りやめる診療所が相次いだこと、新規に開業した医師が外来診療のみで分娩を扱わないことに拠ります。いずれも分娩のリスクと不規則な生活を回避するためと思われます。分娩をやめた病院は5箇所ありますが、これは産科医師不足と関連があります。それまで勤めていた医師が辞めた後、医師の補充ができず常勤医が不在に、あるいは1名だけになったからです。

 

 産科医師が減少した理由は、いくつか挙げられています。簡単に言いますと、(1)激務でストレスの多い科であること、(2)医師一人あたりの医療訴訟件数が最も多い科であること、(3)だからといって報酬(給与)は他科と変わりのないこと、です。一度でも産婦人科を辞めたいと思ったことのある医師は実に50%以上にも上るそうです。女性医師の増加も産科医師不足に関係していると言われます。現在、30才未満の産婦人科医の70%は女性です。女性医師の半分は出産後、育児のため分娩の現場から離れ、復帰してからも外来を中心とした仕事に就くようです。

 産科医師不足解消のためには実際的な対策が必要で、以下のような方法があげられ、その一部は実施されています。

1.待遇の改善

 日本産婦人科学会や日本産婦人科医会は、お産を扱っている病院に、労働に見合った給与体系を作成するよう指針を呈示しています。それにより、すでに分娩立ち会い手当や診療報酬上のハイリスク妊娠あるいはハイリスク分娩加算分を、産科医師の給与に上乗せする形で還元している施設がありますが残念ながら、まだ十分に浸透しているとは言いがたい状況です。わが国では病院管理者の立場上、産婦人科医だけを手厚く待遇することは難しいようです。

2.労働条件の改善

 激務を緩和することは極めて重要な課題ですが、こればかりは産婦人科医師がある程度確保されない限り、解決策はありません。お産を扱う施設を一カ所にまとめる、いわゆる"集約化"により、産婦人科医師を集めることで、労働基準法に則った勤務体制を整える病院が出ていますが、これこそが正に「お産難民」を生み出す一因となっている訳です。単なる集約化ではなく、病院の機能を分担することにより、医師数を適正に配置し、医師の労働条件を十分に考慮した上で、リスクの低い場合は近くで分娩できる体制を作ることは出来ないものでしょうか。

3.訴訟リスクの軽減

 これから社会に飛び出そうとする医学生や研修医にとって、医療訴訟は、きわめて大きな問題です。産科医療補償制度は、まさに訴訟対策にスタートした制度と言えますが、その効果は、まだまだ未知数です。お産は必ずしもハッピーエンドには終わらない、どうしても救命できないケースも一定の頻度で起こりうる事実を社会全体が認識することも、訴訟を減らす鍵を握っています。

4.教育

 医学生や研修医に周産期医療の魅力をアピールする、これこそが最も重要な課題と言えます。中でも大学における教育は基本中の基本であり、講義や実習を通して是非、出産の神秘と素晴らしさに触れていただきたい。しかし、妊産婦さんの中には医学生の立ち会いを望まない、という方が結構います。私が産婦人科医師になったきっかけの一つは、学生時代にいくつかのお産を見学させていただいたことです。秋田県の妊産婦さんにお願いします。どうか、医学生の実習に快く、ご協力をお願いします。その中の何人かが周産期医療を志望するかも知れないのです。

5.女性医師の復職支援
 子育てが一段落した女性医師に対して、再教育などを通してお産の現場に復帰しやすい環境を作ることも産科医不足対策にあげられます。

 そのほか、助産師外来や院内助産など、助産師の活用も産科医師不足対策の一つとして叫ばれてはいますが、これは産科医療の見直しとしての側面もあり、大きな課題であることから、別の機会に取り上げることにします.

 秋田県の出生率(人口1000人に対する出生数の割合)は全国で最も低く、それも断トツの低さで、しかも、かなり長い期間、最下位を守り続けています。出生数の減少する速度も速く、おそらくあと数年で年間7000人を切ることが確実視されています。医師不足に勝るとも劣らない深刻な状況です。元気の出ない秋田県を何とかしたい、多くの秋田県民は思っているはずです。せめて、数少ないお産は満足のゆくものであって欲しい、そう願わずには、いられません。そのためにも、家族に見守られながら、信頼のおけるスタッフのいる施設で、安心して出産できる医療環境を整える必要があるわけです。周産期医療問題の改善は、出生数を減らさないヒントでもあります。(平野秀人 記)

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妊娠・出産にかかる費用

Q1:妊婦健診にかかる費用はどれ位ですか?

A1:妊娠期間は長いものです。妊婦健康診査(妊婦健診)は母子保健法により、お母さん、赤ちゃんの健康管理、そして安全なお産をするのために行われるのが目的です。

 全妊娠期間中、14回程度の妊婦健診を受けることが推奨されています。具体的には妊娠810週から24週までは4週間に1回、24週から36週までは2週間に1回、36週からは1週間に1回ですから40週までで14回となります。

 妊婦健診は医療保険適応になりませんので、本来は妊婦さんが実費で払うものです。(1回に5000円~10000円位)本来はかなりのお金がかかりますが、秋田県では全市町村統一で、母子手帳交付時に、14回分の公費補助券が発行してもらえます。これを毎回利用すれば、実費負担は軽減されます。公費補助券には検査内容が決められています。各施設により、それ以外の検査を行った場合には、実費負担がかかります。

 妊婦健診は、お母さん、赤ちゃんにとってとても大切です。公費補助により実費負担も大幅に軽減されていますので、必ず決められた回数を受けるようにしましょう。

 

Q2:出産にかかる費用はどれ位ですか?

A2:出産費用は各施設の実情に即して決められます。自費診療ですので各施設によって異なります。秋田県では正常分娩の場合40万~50万円位となっています。(東京都の場合50万~100万円位)ただし異常分娩となり、吸引、鉗子分娩、帝王切開等の産科手術が必要となった場合は医療保険の適応となります。

 平成2110月より出産育児一時金が42万円となりました。そして原則、かかった出産費用に出産育児一時金を充てることができるよう、出産育児一時金が各施設に直接支払われる仕組みに変わりました。この制度を利用すれば42万円の範囲内で、まとまった出産費用を事前に用意する必要がありません。簡単に言うと以下のようになります。

例1)           出産費用45万円の場合42万円を差し引いた3万円を支払います。

例2)           出産費用42万円の場合42万円を差し引くと支払いは発生しません。

例3)           出産費用が42万円未満の場合は、その差額分を医療保険者に請求することができます。 

以上の仕組みにより、この制度を利用すれば実際に出産退院時に支払うお金は、それほどかかりません。

 皆さん、安心して出産に望んで下さい(並木 龍一 記)


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帝王切開を考える

 

 帝王切開とは妊婦の下腹部を切開し,子宮を直接切開して赤ちゃんを取り出す手術の事をいいます.帝王切開という名前の由来は,ローマ皇帝ジュリアス・シーザーがこの方法で生まれたためという説がありますが,紀元前のこの時代には死んだ妊婦を切開して赤ちゃんを取り出す事はあったようですが,生きた妊婦に対して行ったとはとうてい考えられません.また,シーザーの母親は出産後も生存していたという事実もあるそうなので,この説は疑わしいです.

 

 さて,帝王切開が必要な場合は以下のとおりです.

①胎児機能不全(胎児仮死)

 分娩中に赤ちゃんが酸素不足で苦しくなった場合です.子宮口が全開大していれば,吸引分娩や鉗子分娩で赤ちゃんを分娩させることが可能ですが,子宮口全開大前で,分娩まで時間がかかると予想される場合には,酸素不足により,赤ちゃんの脳に障害が発生する可能性が生じるため,これを回避するために帝王切開を行います.

②常位胎盤早期剥離

 赤ちゃんがまだ子宮内にいるのに,突然胎盤が剥がれてしまう事です。胎盤の剥がれる面積にもよりますが,赤ちゃんが苦しくなり,早く産ませないと死亡してしまいます.母体も血液が固まりにくくなるDICという状態になり,出血が止まりにくくなり,出血多量になる可能性があります.

 以上の2つは,予想がしにくく,突然発生する事が多いです.そして発生したら,できるだけ早く帝王切開をしないと赤ちゃんに後遺症を残す可能性があります.

③前置胎盤

 胎盤が子宮口を覆っているもので,経腟分娩をすると大出血をきたすため,帝王切開しなければなりません.紀子様が悠仁様をご出産なさったときが,この前置胎盤でしたので,覚えていらっしゃる方も多いと思います.

④児頭骨盤不均衡

 赤ちゃんの頭が骨盤に比して大きく,産道を通り抜けられないと判断された場合です.骨盤の大きさとは関係なく,難産で分娩が進行しない場合も広い意味でこの範疇に入ります.以前は骨盤のレントゲン撮影をして,判定する事が多く行われておりましたが,レントゲン撮影の結果はかなり曖昧で,通らなそうと思っても,以外と楽にお産になる事も多いことや,胎児のX線被爆の問題などもあり,最近ではほとんどやられなくなっております.分娩できるかどうかは,分娩してみなければわからない.分娩してみて分娩にならないようなら帝王切開をすればいいのです.ただし,骨盤骨折や骨盤手術の既往,骨盤の変形があらかじめわかっているような場合は,事前にレントゲン撮影をおこなって,経腟分娩に支障� ��ないかどうか検討する事はあります.

⑤骨盤内腫瘤

 骨盤に問題がなくても,子宮筋腫や卵巣嚢腫などが産道を圧迫しているために経腟分娩ができない場合もあります.このような場合も帝王切開が行われます.

⑥骨盤位

 いわゆる逆子です.逆子の場合でも経腟分娩は可能なのですが,赤ちゃんの体の中で,最も大きい部分は頭で,普通の分娩であれば,頭が変形して細くなりながらゆっくりと下降してくるのですが,骨盤位の場合は頭より小さい部分が先に出てしまって,最後に一番大きな頭が出ることになります.したがって頭が骨盤に合わせて変形する時間がありませんので,頭が引っかかって出にくいことがあります.このとき頭を出すために,赤ちゃんの体を牽引するのですが,無理な牽引により,首や腕の神経を損傷したり,頭の中に出血したりすることがあります.最近では世界的に逆子の経腟分娩をやらない傾向になってきており,逆子の経腟分娩をやったことはおろか,見た事もないという産科医も増えてきておりま� �.

⑦既往帝王切開,既往子宮手術

 前の分娩で帝王切開をした場合には,子宮の切開創が裂ける子宮破裂の危険性があるため,次の分娩でも帝王切開が選択される事が多くなっています.しかしながら子宮破裂の危険性は実際は多くはなく1%未満と言われており,経腟分娩も十分に可能です.しかし,経腟分娩する際には子宮破裂が起こった場合に迅速に帝王切開ができる体制が整っていることが必要不可欠です.このような体制の整った病院は極くわずかのため,経腟分娩を行わず,最初から帝王切開をする病院が多いのです.過去に子宮筋腫の手術をした場合なども子宮に切開創があるため,同様のことが言えます.

 


どのように命を救うことができる

 近年帝王切開率は世界的に増加しており,問題視されてきております.たとえばお隣の中国では約50%が帝王切開で産まれています.ただし,中国の場合には一人っ子政策のため一人しか分娩できませんので,たった一人の子供を障害なく分娩させようと慎重になりすぎた結果と捉えれば理解できなくもありません.ブラジルも帝王切開率50%以上ですが,こちらの方は経腟分娩で腟が広がることを嫌って帝王切開をする妊婦が多いのだそうです.それをもっとも喜ぶのがパートナーだそうで,日本ではとうてい考えられない事です.さて,我が国の帝王切開率は約20%で,この20年間で倍増しております.帝王切開が増える事により,これまではあまり起こらなかったようなことが起こるようになってきました.その代表� ��癒着胎盤です.前回の帝王切開の子宮切開創部分に胎盤が付着すると,子宮の壁の中に胎盤が食い込み,剥がれにくくなります.これを無理に剥がすと,出血多量となるのです.2006年の福島県立大野病院の事件が記憶に新しいところですが,これは前回帝王切開の妊婦に前置胎盤のため帝王切開したところ,癒着胎盤を合併しており,胎盤を剥がしたところから多量に出血し,子宮全摘をして止血を図ったものの,出血多量のため母体死亡となり,医師が逮捕されたという事件です.このようなことは十数年前まではほとんど起こらなかった事です.このような悲惨な事態を避ける最もよい方法は,なるべく帝王切開をしない,特に初産の時に帝王切開をしないようにするということしかありません.どうしても帝王切開以外方法がない� ��合は仕方ないとして,帝王切開をしなくて済む方法があるのであればそれを選択し,遂行できるように産科医は知識と技量を高めるべく研鑽する必要があります.産科医だけでなく,妊婦の側も帝王切開を安易に行うと次の妊娠において大きな危険を背負うことになるということを認識し,産科医から帝王切開の提示があった際には本当にそれしかないのかどうか,よく話あって欲しいと思います.そうして20%まで増加してしまった帝王切開率を再び10%以下まで低下させて,帝王切開をしたがために,その後の妊娠で悲惨な結末を迎えるような事態がなくなるようになって欲しいものです.(真田広行記)


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「新しい子宮頸がん検診:ベセスダシステム2001

Ⅰ.はじめに

 がん検診の普及に伴い、子宮頸がんは早期発見が可能となり、近年死亡数の減少が見られている。しかしながら、わが国においては、近年20歳代・30歳代の若年女性における発生数・死亡数の増加が見られ、それぞれの年代において最も頻度の高い癌となっている。

 子宮頸がんは発生原因が明らかにされており、前癌病変(異形成)が存在し、細胞診検査は早期発見に有効な検査法である。したがって、子宮頸がんによる死亡数を減少させるためには、まず子宮頸がん検診の受診率を向上させ、早期発見に努めなければならない。

 これまでわが国で使用されてきた子宮頸部細胞診様式は、日本母性保護医協会(現日本産婦人科医会)のパパニコロウ分類を修正したいわゆる"日母分類"であった。形態学的にクラスⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴに分類され、汎用されてきた。しかしながら、近年の細胞診断学・分子生物学の進歩に伴い、子宮頸がんの発癌機構の一部が明らかにされ、医学的エビデンスを考慮した分類を作成する必要性がでてきた。また、国際的に用いられている細胞診分類との互換性も求められた。このため従来使用されてきたこの「日母分類」から「ベセスダシステム2001」が導入されるようになった。

 

Ⅱ.「日母分類」の改定の必要性

「日母分類」の改定が必要となった主な理由を以下の14に列挙する。

1 検診の精度管理のため、単なるクラス分類ではなく推定病変を記述する必要がある。

2 標本の適正・不適正を評価し、不良(不適正)標本をなくす。

3 診断困難な異型細胞に対して、新しいクライテリアを設ける必要がある。

4 子宮頸がんの発癌におけるヒトパピローマウイルス(HPV)関与のエビデンスを取り入れる。

 

Ⅲ.ベセスダシステム2001準拠 細胞診結果

 細胞診結果は、ベセスダシステム2001に準拠した報告様式で報告される。

 

Ⅳ.ヒトパピローマウイルス(HPV )とHPV検査(HPVDNAテスト)

 ①HPVとは?

HPVとは、ヒトにのみ感染する二本鎖DNAウイルスで、世界中にどこにでも存在している。HPVウイルスが産生するタンパクが、癌抑制遺伝子であるRbp53を不活性化したり、テロメレースを活性化することにより、癌化がおこる。現在、100種類以上の型があるが、そのうち癌化に関連の深いハイリスク型HPVは、16183133353945515256585968であり、そのうち子宮頸がんに最も関与の強いものは、16型と18型である。ウイルス学的な研究に基づくと、子宮頸がん症例のほぼ100%、肛門がん症例の約90%、外陰、腟、陰茎がん症例の40%はHPVが原因であると報告されている。

子宮頸部におけるHPV感染は、女性の一生を通して約85%以上が感染するといわれている。HPV感染は通常23ヵ月で体内からクリアされ、約90%は2年以内に消失する。子宮頸がんの原因は、ハイリスク型HPVの持続感染によるものである。

 

HPV検査(HPVDNAテスト)

旧日母分類とベセスダシステム2001の大きな違いの一つとして、HPV関与のエビデンスを取り入れたことが挙げられる。20104月より子宮頸部細胞診にてASC-US(意義不明な異型扁平上皮細胞)と診断された場合に限るが、HPV検査が保健適応となった。これによりハイリスク型HPV感染の有無を保険診療で調べることが可能となった。

(藤本 俊郎 記)


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分娩は病気ではないが・・・安全な分娩を目指して

現在、秋田県では1年間に約7000名の方が分娩されています。その中で、自然分娩される方の割合は、約7080%であると考えられています。しかし、2030%の方は、吸引分娩や鉗子分娩、または帝王切開分娩となっています。多くの方が、自分は健康であるから分娩も問題ない(または問題なかった)と考えておられるようですが、本当は、ほとんどの方が正常の経過をたどることはありません。先ごろ、放鳥され自然界で生活している佐渡のトキの5組が営巣し卵を産んだとのニュースがありました。しかし、多くの関係者が一生懸命に努力したにもかかわらず、結局一羽もかえることがありませんでした。自然界で生きる厳しさを実感する出来事だったと思います。しかし、私たち人間はこれではいけません。母児共に安全に出産されるようにしていく必要があります。日本でも大変な時代がありました。昭和20年代の戦中・戦後の頃です。この時代には、昭和15年には、妊産婦死亡率は、229(分娩10万件で229人が亡くなるとういう率)ですから、実に400人に一人は出産が原因で死亡されるという時代だったわけです。そこで、これを打開する必要があり、昭和40年に母子保健法という法律が制定され、妊婦健康診査がシステム化されたわけです。このシステムは世界でも非常に優れたシステムとして知られています。この妊婦健康診査によって、日本は世界で最も妊産婦死亡の少ない国の一つとなったわけです(現在の妊産婦死亡率は5程度です、すなわち2万人に一人の割合です)。私たちは、このような妊婦健康診査や助産師さん産婦人科医師の指導を通じて、できるだけ正常の妊娠経過をたどらせるようにしていることをご理解ください。ここでは、その妊娠経過ができるだけ正常になるようにするためにみずから実行できる一般的な方法をご紹介したいと思います。

 

1)病気のある方はしっかり治しましょう。

妊娠可能年齢にある若い方は基本的には大きな病気を持っていることは稀ですが、若い女性によく認められる病気もあります。たとえば、甲状腺機能亢進症(バセドウ氏病)や特発性血小板減少性紫斑病などです。このような病気をもっている場合には、妊娠される前に担当の内科の先生と十分に相談する必要があります。妊娠してはいけない時期もありますし、服用している薬の種類によっては、妊娠を避けなければならない場合もあります。心配であれば、事前に産婦人科を受診し、妊娠が可能かどうかを尋ねてください。「妊娠前カウンセリング」と呼ばれ、ほとんどの病院の産科の先生は対応してくれます。病気の種類によっては、妊娠してはいけないものもあります。ただし、内科の先生の判断でのみ決まるも� ��ではありません。「妊娠前カウンセリング」により逆に妊娠できる場合もありますので、気軽に産婦人科を受診してみてください。また、妊娠することにより生命の危険にさらされる場合もあります。このような病気をもっている方の場合には、産婦人科でしっかりとした避妊を受けることも必要となります。

 

2)妊娠したら病院に行きましょう。

妊娠したらできるだけ早い時期に産婦人科医師の診察を受けましょう。月経が不規則の方や、仕事が忙しくて病院に行く時間がない方の中には、病院での診察が遅れてしまう方がいらっしゃいます。また、最近では、ご自身で妊娠反応検査をして、妊娠であることが受診前にわかってらっしゃる方もいますが、病院で確実に子宮内の妊娠と診断してもらいましょう。子宮外妊娠(異所性妊娠)の中には、突然の腹痛を来すような場合もあり、命にかかわることもあります。産婦人科を受診するのにもっとも適切な時期は、妊娠56週前後です。これは、月経が28日周期で規則的に認められる方の場合、予定される月経が12週間程度遅れている時期に相当します。つわり(妊娠悪阻:にんしんおそ)が出る頃は、妊娠67週前後ですので、「胃の調子が悪い」、「突然の吐き気」などの症状があった段階ですぐに産婦人科の病院を受診して下さい。たとえ、自宅出産を考えているなどの方であっても、必ず産婦人科医の診察を受けて下さい。

 

3)自分にあった産院をみつけましょう。

妊婦さんの状況によっては、妊娠中または分娩中に危険な状態になったりすることがあります。お産を扱う多くの病院は、その妊婦さんの状況にあった適切な対応が可能ではありますが、すべての緊急事態に対応できるわけではありません。妊婦さん自身の状況にあう適切な病院を見つける必要があります。一般的には、妊婦さんがどんな状態であっても対応が可能な病院と、正常分娩のみを扱う病院に分けられます。正常分娩を扱う病院は、産院とよばれる分娩施設です。おおくは個人の先生がひとりまたは二人でお産を扱っていることが多く、開業医院にあたります。それに対して、どんな状態であっても対応が可能な病院は、総合病院と呼ばれるところです。このような総合病院では、複数の産婦人科医が24時間体制で、お産をみてくれますので、非常に安心できます。また、生まれた赤ちゃんに病気があったり、早く生まれてしまったりという様な場合にも対応できる病院もあります。これは、周産期センターと呼ばれる病院です。秋田県内では、秋田赤十字病院、大館市立病院、平鹿総合病院が周産期センターと呼ばれる病院で、秋田大学医学部附属病院も周産期センターに準じた病院となります。しかし、どのような方が、どのような病院に行くのでしょうか?

皆さんは、どんな基準で妊婦健診を受ける病院を選んでいますか?「自宅の近くにあるから」、「病院がきれいだから」、「評判が良いから」などが一般的のようです。しかし、最も大切なことは「自分にあった病院だから」ということです。自分自身にもともと病気がある方の場合には、なおさらしっかりした病院を見つけることが重要です。病気を持っていなくとも様々な理由で妊娠は母体を危険にさらすことがあります。たとえば、血液型でRh(-)の方は、妊娠中にさまざまな病気を引き起こすことがあります。したがって、血液型がRhマイナスというだけで危険な妊娠経過をたどる可能性があるということです。このように、自分では問題ないと思っていても、妊娠中は様々な危険が隣り合わせています。そのために、「自分にあった病院」を見つける必要があります。「妊娠リスクスコア」というのが、インターネットで紹介されておりますので、自分で判断してみてください。妊娠初期または中期で行うことができます。この結果を基に受診する病院をもう一度見直してみましょう(妊娠リスクスコアについてはこちらで).

 

4)定期的に妊婦健康診査を受けましょう。

自分にあった病院を受診しました。しかし、これのみでは、安全な分娩はできません。定期的に受診する必要があります。妊娠6か月までは、4週間で1回の受診が必要です。妊娠7か月以降は2週間に1回となります。また妊娠10カ月になると毎週の受診が必要となります。働いている方の場合、産前休暇が認められておりますので、妊娠9カ月以降の受診は容易にできますが、それ以前の場合には、勤務中に抜け出して病院を受診する必要がありますので、容易にはできないことがあります。しかし、妊婦健診の受診は、法律で認められたものですから、勤務先にしっかりと説明しましょう。これでも休みをくれないというようなことがあれば、労働基準監督署に話して下さい。「強硬なやり方は好かない」という方もいらっしゃいますので、その場合には、産婦人科の外来で看護師さんや、助産師さんに話してみてください。場合によっては、ソーシャルワーカーさんが対応してくれます。また、最近、秋田県の全市町村は妊婦健診中の健診料の補助を行っております。したがって、健診をうけるのに「お金がないから」というのはあまり気にしなくとも良い� ��うになっております。また、どうしても受診費用がない場合には、秋田県ではすべての市町村で「助産制度」という制度があり、公的に補助をおこなっておりますので、不明の場合には、産婦人科外来で確認してみて下さい。

産婦人科の先生や、外来の助産師さんは、妊娠中におこるさまざまなことに対して適切にアドバイスをしてくれます。不明なことがあれば、積極的に聞いて、疑問を解決しましょう。自分自身の健康は自分で守るという意識で、出産に臨む必要がありますので、積極的に疑問をぶつけてください。もちろん、すべての疑問に答えることはできません。たとえば「赤ちゃんに病気はないのですよね」と聞いてこられる妊婦さんもいらっしゃいますが、基本的には、生まれてみなければわからないことです。「今のところ元気ですけど、はっきりとはわかりません。」と答えることが多いのですが、別に不安になる必要はありません。すべての方がそうなのですから。

 

5)妊娠経過を楽しみましょう。

妊娠中は、妊婦さんの体自身に大きな変化が起きます。お腹は大きくなってくるし、妊娠線という「あざ」も出てきます。食べ物の好みもかわる方もいます。すべての変化を、楽しんで過ごしましょう。流産を経験されたりすると、妊娠中の下腹部痛に敏感になる方もいらっしゃいますが、妊娠中には、通常でも子宮の収縮が定期的にあります。生理的な子宮収縮ですから問題はありません。こころ穏やかに、妊娠経過を過ごすことで、お腹の赤ちゃんには良い影響が出るようです。妊娠中の体重増加を気にして、運動をなさる方がいますが、あまりお勧めはできません。マタニティービクスというものもあるようです。妊娠前にされていた方が、妊娠中も継続して行う場合には問題ありませんが、妊娠して新たに始める� ��要はありません。マタニティービクスは母体に対して「精神的」なメリットはありますが、お腹の赤ちゃんに対してのメリットは全くなく、むしろデメリットだけしかありません。どうしても妊娠中に運動したいようであれば、マタニティー・スイミングが良いようです。これも実際に泳ぐのではなく、プール内で15分程度「歩く」だけという運動です。

 また妊娠中にお腹が大きくなると、どうしても移動に制限が出てきます。車に乗っていてもシートベルトをするのがおっくうになったりします。しかし、妊婦さんの交通事故による死亡はとても増えています。細心の注意で運転するか、同乗の際にもしっかりと腰骨にシートベルトをするようにしましょう。

 

最後に、妊娠中の「快適性」と「安全性」は反対のものです。快適性を追求すれば、安全は犠牲となります。これを十分に理解した上で、妊娠経過を過ごして下さい。(小川 正樹 記)

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出産育児一時金の医療機関等への直接払い制度について

 

1.本制度が導入された経緯

 本制度は平成21101日にスタートしました。それまで出産一時金は、出産後に被保険者である産婦さんや、そのご家族が保険者に申請して、保険者から直接支払われる仕組みでした。しかし、その場合、一時的にせよ、退院時までに多額の現金を用意する必要があったわけです。平成18年秋頃より、本制度の先駆けとして「出産育児一時金受領委任払い制度」が既に行われていました。しかし全国規模でなかったこと、国民健康保険など一部の健康保険加入者に限定されていたことから一般化されるには至りませんでした。

 本制度の目的は安心して(お金の心配をしないで)出産できる環境を整備することにあり、少子化対策の一環でもあります。また、分娩費未払い問題の解決策としても期待されています。

 

2.本制度の具体的な要領

 被保険者である妊婦さんが出産する医療機関と、出産育児一時金の支給申請および受け取りに係る代理契約を結ぶことによって、出産後、医療機関は、妊婦さんが加入している医療保険者に出産育児一時金を請求することになります。これにより、出産経費が一時金(42万円、妊娠22週未満の流産時は39万円)以内であれば、退院時に医療機関に現金を支払う必要はありません。費用が42万円を越えた場合は、不足分を医療機関窓口に支払うことになります。42万円未満でおさまった場合、産婦さんは、その差額を医療保険者に請求することができます。帝王切開など保険診療を行った場合は、3割の負担をお願いすることになるわけですが、一時金をこれに充てることもできます。

 この制度を利用するためには、妊婦さんは健康保険に加入している必要があります。また保険証を変更した場合は、速やかに医療機関に呈示する必要があります。1年以上の勤務経験のある職場を退職後、半年以内に出産した場合は、在職時に加入していた医療保険から給付を受けることが可能です。その場合は、退職時に交付された資格喪失証明書を保険証と併せて呈示する必要があります。


双子は同じ嚢を共有することができます

 妊婦さんが転院などにより、契約を結んだ医療機関で出産しなかった場合、代理契約は無効となり、そのままでは直接支払制度を活用することはできません。この場合、転院先の病院で新たに契約を結ぶ必要があります。また、この制度を利用しないで、従来通り、退院時に医療機関窓口に現金を支払い、後日、保険者から出産育児一時金を支払ってもらうことも可能です。

 

3,本制度の問題点

 医療機関に支払機関から支払いがあるのは、請求してから2〜3ヶ月後になるため、その間、医療機関は資金繰りが大変になります。そのため本制度の導入を見合わせている医療機関も少なくありません。また、途中で保険を喪失したり、変更になったり、分娩する施設が変わったり、そのたびに契約のための手続きが煩雑であったり、請求のための書類作成も面倒である、との声もよく聞きます。

 

4.問題点に対する対応

 資金繰りなどの問題から、本制度への対応が困難な医療施設について、本制度の適用猶予期間が平成23331日まで延長されました。ただし、このような施設は、施設の窓口に直截支払制度に対応していない旨を掲示するとともに。妊婦さん一人一人に、その旨を説明し、書面により合意文書をかわす必要があります。退院時に、支払いが困難な産婦さんに対しては、個別に直接払い制度に対応すること、医療保険者による出産費用の貸し付けや都道府県社会福祉協議会による生活福祉資金貸し付けについて説明し、受けることが出来るよう支援する必要があります。

 医療機関の資金繰り援助のため、支払期間を短縮する策として、正常分娩に係わる請求については、月1回の支給申請および支払いを、それぞれ月2回とする方向で進んでいます。さらに金利の引き下げや、無担保融資限度額の廃止、担保を提供する場合は若干の金利を上乗せし、保証人を免除する貸付制度を開始する予定です。(平野 秀人 記)


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妊婦健診補助について

 

 健康な赤ちゃんを産むためには母体が健康であることが必要不可欠です.近年,働く女性が増え,晩婚化が進み,さらには体外受精などの不妊治療の発達により,高齢の妊婦や,合併症を抱えた妊婦が増加しており,母体,胎児の健康確保を図るために,妊婦健診がますます重要になっております.また,少子化対策の一環として,妊娠中の健診費用の軽減が求められており,これに対して国は妊婦健診の公費負担として,14回分,合計113,000円相当を地方交付税交付金と補助金を充てております.しかし,地方交付税交付金の使途は自治体の裁量に任せられるため,財政難の自治体においては,全額が妊婦健診に充てられることはありません.ですから,妊婦健診の公費負担に関しては市町村によって差があるのが当� �で,実際他県では市町村によってかなりの格差が生じているのが現状です.秋田県では当医会,県,市町村が話し合い,県内どこでも同じ内容の健診を同じ公費負担で受けられるように,全市町村が足並みを揃えて妊婦健診の補助券を交付しております.回数は14回分ですが,残念ながら総額93,500円となっております.各補助券には週数に合わせて必要な検査項目が入っており,これを施行することで,県内どこの医療機関で妊婦健診を行っても,必要最低限の健診がおこなわれることになります.それぞれの補助券の検査内容と金額は以下の表のとおりです。

 

回数

週数

体重測定,血圧測定,尿検査

血液検査

超音波検査

その他

補助金額 (円)

1

8〜11

または1回目

血液型 (ABO, Rh)

貧血,血糖,不規則抗体,梅毒,B型肝炎,C型肝炎,成人T細胞白血病,エイズ,風疹

 

 

14,500

2

12〜15

 

 

 

4,600

3

16〜19

 

 

8,000

4

20〜23

 

 

 

4,000

5

24〜27

 

 

 

4,000

6

24〜27

50g糖負荷試験

 

10,210

7

28〜31

貧血,不規則抗体

 

 

7,500

8

28〜31

 

 

 

4,000

9

32〜35

 

 

8,000

10

32〜35

 

 

腟内B群溶連菌

7,100

11

36週以降

 

 

8,000

12

36週以降

 

 

 

4,000

13

36週以降

 

 

NST

5,590

14

36週以降

 

 

 

4,000

 

 妊娠に気付くのが遅れ,初回の健診が遅くなってしまった場合も1回目の補助券は必ず使用し,次回から週数に応じた補助券を使用します.

 

 他都道府県に転居した場合はこの補助券を使用できません.また,里帰り分娩等で他県の医療機関を受診した場合にもこの補助券は使用できません.しかし,市町村によっては補助券の金額相当分を償還払い対応となるところもありますので,お問い合わせください.

 

 平成21年度と22年度で補助券の内容,金額が異なりますが、平成21年12月までに補助券を交付された妊婦さんはそのままの内容で最後まで健診を行います.一方平成22年1月以降に補助券を交付された妊婦さんは4月以後は新しい補助券に移行します.

 

 この補助券はあくまでも補助であり,決して無料券ではありません.したがって例えば超音波検査のない補助券の回に超音波を施行した場合には病院所定の金額を請求されることになりますのでご了承ください.

 

 現時点で妊婦健診の公費負担制度は平成22年度で終了することになっております.しかし,当医会としては来年度以降も引き続きこの制度を存続させ,なおかつ公費負担金額の増額を求めるべく働きかける所存です.(真田 広行 記)

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産科医療補償制度のご案内

 

健康で元気な赤ちゃんが無事に生まれてきてほしいという妊産婦とご家族の願いをかなえるために、医師や助産師は全力で取り組んでおります。しかしながら、予期せぬことにより、障害を持って生まれてくる赤ちゃんがいることも事実です。万が一、赤ちゃんに、分娩に関連して重度の脳性まひが発症した場合には、赤ちゃんとそのご家族をサポートしたいという想いから、病院・医院は「産科医療補償制度」に加入しています。

 

産科医療補償制度とは

分娩に関連して発症した重度の脳性まひの赤ちゃんとその家族に経済的補償を速やかに提供することに加えて、重度脳性まひ発症の原因分析を行い、将来の同種事例の防止に役立つ情報を提供することなどにより、紛争の防止・早期解決、産科医療の質の向上を図ります。妊産婦の皆様が安心して産科医療を受けられるように、病院・医院が民間の損害保険に加入して補償する制度です。

 

補償対象について

    補償対象は、200911日以降出生した児のうち、運営組織が以下の基準を満たすとして、補償対象と認定した脳性まひ児です。

     出生体重2,000g 以上かつ在胎週数33週以上

     身体障害者等級12級相当の重症者

    なお、出生体重、在胎週数の基準を下回る場合でも、在胎週数28週以上の児については「個別審査」により補償対象となることがあります。

    先天性要因。新生児期の要因等によるものは、補償対象となりません。

 

補償内容について

分娩に関連して発症した重度脳性まひと認定された場合には、準備一時金600万円と補償分轄金2,400万円(年間120万円を20回)の補償金(総額3,000万円)をお支払いします。

 

妊産婦の皆様へのお願い

    この制度に加入している病院・医院では、妊産婦の皆様にこの制度の対象となることを示す「登録証」を交付します。必要事項のご記入などについてご協力をお願いします。

    「登録証」は、母子健康手帳に挟み込むなどして、出産後5年間は大切に保管して下さい。

 

制度の仕組みについて

    本制度は病院・医院が加入する制度です。従いまして、補償に向けた掛け金は病院・医院が支払います。

    本制度に加入している病院・医院で出産された場合(22週以降の分娩)には出産育児一時金に3万円が加算されます。

 

補償申請について

    補償申請は、生後1年以降、満5歳の誕生日までに行うことができます。ただし、極めて重症であって、診断が可能となる場合は、生後6ヶ月から申請を行うことができます。

    なお、児が生後6ヶ月未満で死亡した場合には、脳性まひと診断することが困難であるため、本制度の補償対象として認定されません。

    申請にかかる具体的な手続きについては、出産された分娩機関または運営組織である財団法人日本医療機能評価機構(電話:03-5800-2231)にご確認ください。

 

その他注意事項

1)     産科医療補償制度の対象は、本制度に加入している分娩機関での出産となります。

転院される場合には、転院先の分娩機関が本制度の加入分娩機関かどうか(財)日本医療機能評価機構のホームページ(で事前にご確認ください。

2)     分娩機関に過失が認められ損害賠償金が支払われる場合、補償金と損害賠償金を二重  に受け取ることはできません。

3)     制度に関する詳細は、補償約款、(財)日本医療機能評価機構のホームページをご確認ください。  (高橋 道 記)

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乳がん検診について

 

○日本の女性がいちばんかかりやすいがん

現在わが国では,年間約5万人の方が乳がんにかかり,約1万人の方が乳がんで亡くなっています。乳がんは,日本の女性が一番かかりやすいがんで,累積乳がん罹患リスクがおよそ5%とされていることから,20人にひとりが乳がんにかかる時代になっています。特に40歳代で,かかる方も,亡くなる方も一番多く,まさに働き盛りの女性を襲う,恐ろしい病気のひとつが乳がんです。

 

○リスクファクターは女性ホルモン

女性ホルモン(エストロゲン)が,乳がんの発症に深く関わっていることは,よく知られています。ヒトでは,妊娠中には排卵が全く起こりませんし,授乳中もほとんど排卵が起こりません。排卵が起こらないと,卵巣から分泌されるエストロゲンの量が,非常に低くなります。したがって,女性が妊娠・出産し,その後1年間母乳を与えると,この間のおよそ2年間は,乳腺がエストロゲンに曝されません。この期間が,乳がんを発症させないことには大変重要と考えられます。ですから,子供を産んだことがない方,授乳をしなかった方は,反対に,乳がんにかかるリスクが高いと言えます。また,初経年齢が早い,あるいは閉経年齢が遅い方も,エストロゲンに曝される期間が長くなるので,リスクが高く なります。この他には,身内に乳がんの方がいらっしゃる方,身長の高い方,閉経後に肥満になった方,飲酒をする方などのリスクが高いと言われています。

 

○乳がん検診は視触診とマンモグラフィー

従来行われてきた乳がん検診は,視て触るだけの視触診でした。視触診による乳がん検診は,乳がんによる死亡率を減少させる効果がないことが知られています。そこで,現在は,これにマンモグラフィーを併用した検診が行われています。マンモグラフィーとは,専用の装置で撮影する,乳房のレントゲン検査のことです。このマンモグラフィー併用検診は,50歳以上の方においては,死亡率を減少させる効果があるといわれていますが,40歳代の方については,効果が不十分とされていて,超音波検査を導入することなどが,現在検討されています。このため,40歳代の方は,マンモグラフィーを2方向から撮影して,より詳しく調べています。マンモグラフィーを併用した乳がん検診のがんの発見率は,視触� ��単独よりも高くなっています。

 

○検診を受けるメリットは

視触診による検診では,ある程度の大きさのしこりができないと,がんを発見することができません。そして,しこりとしてわかるような乳がんは,思いがけず進行していることがしばしばあります。マンモグラフィーでは,しこりとしてわからないほど小さながんや,しこりになる前の乳がんを,早期に発見することができます。その上,ある程度進行した乳がんでは,乳房をすべて切除する必要がありますが,早期に発見された乳がんでは,乳房をすべて切除することなく,温存することも可能になります。ですから,単に死亡率を減少させるだけでなく、乳房温存によるQOL(生活の質)を向上させる効果もあります。

 

○40歳以上の方は2年に1回

40歳以上の方は2年に1回マンモグラフィーを併用した乳がん検診を受けて下さい。もちろん,20歳代,30歳代の方も受けてほしいのですが,残念ながら,自治体による費用の負担はありません。秋田県では,主に外科が検診を担当していますが,産婦人科でも検診を行っている医療機関がありますので,お問い合わせ下さい。また,二次検診が必要であるとの結果が出た場合には,必ず,決められた医療機関を受診して下さい。結果が怖いからといって,二次検診を受けない方がいますが,これでは検診を受ける意味が全くありません。諸外国に比べ,わが国のがん検診の受診率が低いことが指摘されています。検診を受けることは,自分の健康を守るためだけではなく,家族のQOLを守るためにも必要であると思います。� ��んで検診を受けられることを希望します。 (吉岡知巳 記)


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生殖補助技術(ART : assisted reproductive technology

 

市立秋田総合病院  福田淳

先進的な不妊治療を総括して生殖補助技術と呼んでいます。不妊治療は体外受精胚移植の成功から、凍結胚移植、顕微授精など飛躍的に進歩し、不妊で悩まれるご夫婦に大きな恩恵をもたらしてきています。しかし、妊娠・出産は生命の根源であり、これらの治療はあくまで、子供に恵まれないご夫婦に対する補助的な治療手段であることを一義として、このような名称がつけられました。ここでは生殖補助技術についてQ&A方式で簡単に説明させていただきます。詳細については各種不妊専門書、インターネットでご確認ください。また、個人的に不妊に関する悩みがある場合は秋田県不妊とこころの相談センターなどをご利用下さい。

 

Q1 どんな場合に生殖補助技術が必要になりますか?

 

A1 子宮外妊娠、子宮内膜症、骨盤の炎症などにより両側の卵管が全く機能していない場合、精子が極端に少ない場合、などは絶対的な適応になります。また、初期治療を繰り返しても妊娠しない場合、原因不明の長期不妊、高齢婦人、などは相対的適応になります。

不妊治療において生殖補助技術は以下の位置づけになります。

 

 

Q2 生殖補助技術にはどんな種類がありますか?

 

A2 

以下にあげる方法を一般的に生殖補助技術と呼んでいます。

手技名

方    法

参 考

体外受精胚移植(IVF-ET

卵子と精子を体外で受精させ、4細胞期~胚盤胞を子宮内に移植する。

最も代表的な生殖補助技術

凍結胚移植

 

余剰胚をガラス化という方法で凍結し保存する。それを正常周期あるいは人工周期で解凍し移植する。

最近では半数以上が凍結胚による妊娠である。

顕微授精(ICSI

精子数が極端に少ない場合、卵子に直接、針を刺し、精子を1個注入する。

これにより重度男性不妊でも妊娠可能となった。

透明帯除去    (Assisted hatching

卵子を包む透明帯が硬いあるいは厚い場合など、レーザーで透明帯を除去する。

治療効果に関しては未定である。

精巣内精子採取法(TESE

無精子症例に対して精巣から精子を採取する。最近は顕微鏡下に採取する方法(MD-TESE)も行われる。

 

着床前診断(PGD

胚から1個の細胞をとりだし遺伝子診断を行う。

ごく一部にのみ行われている。

配偶子卵管内移植(GIFT

卵管内に卵子と精子を注入する。

煩雑なため最近ではあまり行われていない。

人工授精(AIH

洗浄精子を子宮内に注入する。

従来より行われている簡単な方法。

 

Q3 体外受精はどのように行いますか?

 

A3 一般的には、排卵誘発→採卵→媒精→移植→黄体維持療法→妊娠判定という流れになります。下に一般的な治療の流れを示します。排卵誘発にはいろいろな方法がありますが、一般的にはGnRHアゴニストというお薬で自分から出るホルモンを抑制した後、FSH/HMGとうお薬で排卵を誘発していきます。卵胞(卵子が入った袋)が18mmぐらいになったらHCGというお薬を注射し、卵子を成熟させます。HCG投与後3436時間で卵子は成熟(減数分裂を終了)しますので、そのタイミングで超音波下に採卵をします。採取された卵子に洗浄精子をかける(媒精)、あるいは顕微授精をして受精させます。採卵後およそ48時間で4細胞期になりますので、それを子宮内に移植します。最近ではそこから更に3日ほど培養し、着床寸前の胚盤胞を移植する方法もとられます。

 

 

Q4 成功率はどれくらいですか?

 

A4 妊娠率は年齢の影響を強くうけ、高齢とくに40歳以上になると妊娠率が低下してしまいます。昨年の本邦における治療総周期数に対する生産率は全体で20%弱です。詳しくは日本産科婦人科学会が毎年全国の治療成績をまとめて報告していますのでご参照ください。

(

 

Q5 どんな副作用があるのですか?

 

A5 生殖補助技術における特徴的な副作用としては卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と多胎妊娠の2つがあげられます。OHSSは排卵誘発により卵巣が腫大し、腹水、胸水などが貯留してくる病態です。重症化した場合は血栓症などを併発し、生命予後にも関わることがあります。最近は排卵誘発法の改善や予防などにより頻度は非常に低くなっています。最近までは移植個数を無制限にしていたため、双胎、品胎(三つ子)などの多胎妊娠が問題となっていました。しかし、ここ数年で適正な移植個数を目指す方向性が強まり、特にeSET(選択的単一胚移植:基本的には移植胚数を1個にする)の考え方が浸透してきました。そのため昨年は多胎妊娠が激減しております。

 

Q6 経済的な負担はどうですか?

 

A6 ほとんどの生殖補助技術は私費となっているため、施設間でかなりのばらつきがあります。おおよそ平均すると体外受精治療1回あたり15万円~30万円くらいです。体外受精、顕微授精に関しては一定の条件を満たせば秋田県から補助(秋田県特定不妊治療費助成事業)があります。詳しくは秋田県のホームページをご覧ください。 (福田 淳 記) 

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子宮頸がん予防HPVワクチンについて

 

1.子宮頸がんについて

 国内では、毎年約8,000人が子宮頸がんと診断され、約2,400人が死亡しています。最近、2030歳台における子宮頸がんの頻度が増しています。子宮頸がんの原因は、HPV(ヒューマンパピローマウイルス)による感染であると考えられており、浸潤子宮頸がんの99%以上にHPV感染が認められています。HPVは性行為を介して感染するので、性交開始年齢の若年化と子宮頸がん発症の若年化は、無関係とはいえません。

 

.HPVについて

 HPVは現在、100種類以上が発見されていますが、特に子宮頸がん発症と関係が深いHPVは、13種類あります。その中でも、HPV16型と18型(HPV16/18と略)による感染により、子宮頸がんは発症しやすく、国内では、子宮頸がんの約60%が、HPV16/18の感染により発症すると考えられています。したがって、子宮頸がんを減少させるためには、HPV16/18の感染を防ぐことが有効であると考えられます。

 

3.HPVワクチンについて

 HPVワクチンには、2HPVワクチン(HPV16/18)と4HPVワクチン(HPV6/11/16/18)の2種類があります。今回、2HPVワクチンが承認され、4HPVワクチンが今後承認される予定となっています。2HPVワクチンの場合、1回目の接種した1ヶ月および6ヶ月後の計3回の接種が必要となります。現在HPVワクチンの費用は、1回の接種で約1万〜15千円と推定されています。2HPVワクチンは、HPV16/18だけではなく、類似するHPV31/33/45/52/58の予防効果も有しています。したがって、HPVワクチンの接種によりHPV感染の約70%を予防できるものと考えられています。また、HPVワクチンの感染予防効果は、現在まで約6.4年間確認されており、理論的には、20年以上持続するとされています。

 

4.HPVワクチンの接種年齢について

 HPVワクチンの推奨年齢は、性交経験者が急激に増加する前の1114歳の女児が第一推奨年齢となっています。また、第二推奨年齢は15歳以上の女性となっています。HPVワクチンの承認は、日本は世界で99番目になり、すでに多くの国で公費負担により接種されています。国内では、平成2110月に日本産婦人科医会より厚労省へ、子宮頸がん予防ワクチンの推奨に向けた提言が提出されています。その中で、HPVワクチンの公費負担による接種が提言されていますが、現在のところ公費負担の予定はなく、任意接種を行うしかない状況です。また、性交経験のある方でも、未感染のHPV型による疾患を予防することが可能であるため、HPVワクチンを接種することは意義があります。

 

5.最後に

 HPVワクチンが、既存のHPV感染や子宮頸がんなどの子宮頸部病変に対し治療効果を持たないことを理解する必要があります。また、承認されているHPVワクチンが、全てのHPV感染および子宮頸部病変を完全に予防することはできません。したがって、HPVワクチンを接種された方も、従来通りの子宮頸がん検診を受診することが必要です。  (大山則昭 記)


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「妊婦さんと新型インフルエンザ」

Q1:なぜ「新型」というのですか?
A1:今回のインフルエンザ(A/H1N1型)は、季節性インフルエンザと異なり国民の大部分が免疫を持っていません。
ですから全国的に急速にまん延して、健康に重大な影響を与えるおそれがあるために「新型インフルエンザ」と位置づけられました。

Q2:新型インフルエンザはどんな症状が出るのですか?
A2:症状は、突然の発熱(38度以上)、� �、のどの痛み、鼻汁等で、季節性インフルエンザと似ています。

Q3:妊婦は重症化しやすいといわれていますが、どうしてですか?
A3:まず初めに妊婦さんは感染しやすいといわれています。妊娠すると免疫抵抗力が低下すること、特に妊娠後半期の妊婦さんは、大きくなった子宮に肺が圧迫されて呼吸数が増えるので、飛沫感染を受けやすい状態になります。このような状態でインフルエンザに感染すると、肺炎などを起こし重症化しやすいのです。

Q4:妊婦が新型インフルエンザにかかったと思ったら、どの医療機関を受診すればよいのですか?
A4:直接かかりつけの産婦人科への受診は、絶対にしないで下さい。
 産婦人科は他の妊婦さんへの感染を避けるため、新型インフルエンザの診療は行わないことに しています。発熱相談センターへ電話をして頂き、新型インフルエンザの診療を行っている医療機関を受診して下さい。
 ただし、出血、お腹の張り、陣痛発来など産科的な診察が必要な場合は、かかりつけの産婦人科に電話でご相談して下さい。

Q5:妊婦もお薬などの治療は受けられますか?
A5:抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)は、妊婦さんでも安心して服用できます。処方された場合は必ず服用して下さい。またお子様などが新型インフルエンザに罹った場合は、感染の危険性がありますので、かかりつけの医師にご相談して下さい。

Q6:新型インフルエンザの予防法は?
A6:一般的に手洗い、うがいの励行、むだな外出や人ごみを避けることです。また外出時にはマスクを着用して下さい。あと� ��新型インフルエンザワクチンの接種です。妊婦さんは重症化しやすいので、ワクチン接種の優先順位は医療従事者に次いで2番目です。秋田県では11月中頃から接種開始予定です。かかりつけの医師にご相談して下さい。(並木龍一記)

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「産科医療崩壊」

いきなり暗い話題で大変申し訳ございません。最近は新聞やラジオ、テレビなどの報道で「○○医療崩壊」と言う言葉を耳にする機会が多いことと思われます。その最たるものが「産科医療崩壊」です。「お産難民」、「妊婦のたらい回し」は「産科医療崩壊」を象徴する言葉です。

 なぜ今、産科医療は崩壊の危機に瀕しているのでしょうか?それは、産科医師の不足に他なりません。医療界にあって、産科医は絶滅危倶種と呼ばれています。厚生労働省の調査(2006年)によると、全診療科の中にあって、唯一、医師数の減少が見られるのが産婦人科です。平成になってから年間、約180人ずつ減り続けているそうです。一方、女性医師数は着実に増えています。現在、20歳代の産婦人科医師の約7割が女性医師です。患者さんのほとんどが女性である産婦人科にとって、女性医師が増えるのは好ましいことですが問題がないわけではありません。女性医師の場合、出産や育児のため、一時期、医療現場を離れることが多いからです。中には、一旦、育児のため休聴していた女性医師が復職しない、また復職しても肉体的にキツイ産科診療に携わらない場合が少なくありません。

 産科医師が減れば、お産のできる病院や診療所も当然、減ります。実際、この10年間で、お産のできる施設が全国で、何と約1,000箇所も減ってしまいました。これが「お産難民」、すなわち、お産をする場所を求めてさまよう妊婦さんが増えた理由です。秋田県でも10箇所以上の医療施設が、お産を止め、今、お産を扱う施設は30箇所にも満たないのです。少子少産化の際立つ秋田県でさえ、このように深刻な現象が見られています。

 なぜ産科医は減ったのでしょう。医学生の間では、外科系(手術をする診療科の総称)は3K、すなわち「キツイ・キケン・キタナイ」職場といわれ、QOLが良くないことから敬遠される傾向にあります。産科は、その最たる診療科と言われています。すなわち、(1)休日および昼夜を問わず診療に当たらなければならない(お産は待ってくれない)、(2)当直の回数が多い(他の診療科の3~4倍)、(3)本来、おめでたいはずのお産が急変し、時に母児が生命の危険にさらされることも稀ではない、(4)その結果、医療訴訟の件数(医師1人あたり)が最も多い・・・などなど。これらマイナスイメージが「「生命の誕生にかかわる唯一の診療科」という本来の魅力に勝り、産婦人科を志望する医学生は減ってしまったのです。それに加えて、Quality of lifeQOL)を害する「お産」を止めてしまった産婦人科医も多数います。

 皆さんご存知のように、「産科医師不足」が原因で、数々の社会問題(事件)が発生しました。これを受けて、日本産婦人科学会および日本産婦人科医会は政治を動かし、産科のマイナスイメージ払拭に努めてきました。その甲斐あって、少しずつですが、若い世代の産婦人科医が増えつつあるようです。分娩手当など産科医師の待遇改善や産科補償制度、すなわち脳性麻痺児に対する無過失補償制度は、こうした対策の一端です。その他、出産した女性医師が仕事を続けられるよう、時間外勤務や当直の免除、フレックス・タイム制の導入、病院内託児所の設置などを行っている医療施設も出てきているようですが、まだほんの少数です。

 この紙面を通して皆さんに是非、ご理解いただきたいことがあります。それは「お産は決して安全ではない!」ということです。本来、妊娠・出産は生理的現象で太古の昔から繰り返されてきたことではあります。わずか半世紀前、ほとんどの赤ちゃんは自宅で生まれていました。それが、病院や診療所で生まれるようになり、お産で命を落とす赤ちゃんやお母さんは激減しました。とりわけ日本はお産に関して世界で最も安全な国になりました。お産で赤ちゃんやお母さんが命を落とすなど、まさに想定外になってしまったのです。しかし、産科医療が進歩を遂げた今でさえ、最善を尽くしても、結果が思わしくないことは起こりうるのです。

 医師という職業は「聖職」と言われてきました。「聖職」であるが故に、求められるものが多い反面、その見返りを望んではいけない、つまり「奉仕の精神」を強いられてきたわけです。また医療の進歩は、医療行為における「結果至上主義」を生み出しました。近頃では、結果が思わしくなければ犯罪者扱いされることも珍しくありません。とくに、神様と犯罪者が表裏一体をなしている診療科、それが産科です。君子危うきに近寄らず。かくして産科医療は崩壊に向かったのだと思います。

 このような状況にあって、今なお産科医療を支えている医師連は、生まれてくる赤ちゃんと家族の幸せを生きがいに働いています。ここは皆さんに、産科医療の過酷さと限界について今一度ご理解をいただき、限られた人的資源を大切にすることで、「産科医療崩壊」の防波堤になっていただきたいのです。(平野秀人記)

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